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ハゲワシと少女

ハゲワシと少女  ケビン・カーター
1993年。国連と幾つかのNGOが共同で実施した緊急食料援助活動「オペレーション・ライフライン・スーダン」に同行していたカメラマン、ケヴィン・カーターは空腹の為に歩くのもおぼつかない一人の少女を見かけた。
それは、この地に来てから毎日のように目する光景で、被写体として特にに興味の沸く対象ではなかった。彼はそのまま、その場を離れた。

暫くして、戻ってみると、先ほどの少女はまだ、その場所にいた。彼が立ち去ってから戻ってくるまでの数分間、1歩も歩かなかったようだ。ただ力なく、同じ場所にうずくまっている。
周囲を見まわすと、配給の行列の中に少女を気にするそぶりの女がいる。
母親だろうか。

行列の女の視線を辿り、再び少女に目を向ける。
相変わらず動かない少女の傍らに、いつの間にか、一頭のハゲワシが舞い降りていた。

彼は、反射的にカメラを構えた。
「少女を襲うだろうか?」

一瞬の緊張の後、カメラマンは冷静さを取り戻し、構図を気にかけることができた。
レンズをのぞき、被写体の動きを待つ。
「ハゲワシが翼を拡げてくれれば、よりセンセーショナルだ」

それから、20分待った。
だが、少女もハゲワシも動きをみせない。
彼は見切りをつけ、シャッターを数回押し、またその場を離れようとした。近くには彼女の母親がいる。行列にはたくさんの大人もいる。少女がハゲワシに襲われることはないだろう。

立ち去ろうとして、被写体に背を向けた時、ふいに怒りがこみ上げてきた。
一体、どうしたんだ?自分でもわからなかった。
翼を拡げた瞬間を撮れなかったのは残念だが、この写真はきっと高い評価を得るだろう。
これで、無名の報道カメラマンから一流カメラマンへとキャリアアップできる。
だが、そう考えてみても、怒りは収まらなかった。
彼は、少女の元に戻り、怒鳴り散らしながらハゲワシを追い払った。
その騒ぎが疎ましかったのか、少女はむっくりと起き上がり、歩き始めた。
よろけた足取りで行列の方へ向かって行く。
それを母親がじっと見守っている。

その姿を見つめていると、今度は怒りの代わりに悲しみが襲ってきた。
彼は木陰に腰を降ろし、一服しながら泣いた。

翌1994年。
ケヴィン・カーターはピューリッツァー賞を受賞。
その数ヶ月後、ヨハンスブルグの路上に駐車した車中で死体となって発見される。死因は一酸化炭素中毒。自殺とみられている。
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渡部朋彦 ワタナベ トモヒコ

Author:渡部朋彦 ワタナベ トモヒコ

    
職業:役者
東京下北沢で、毎週公演を続ける劇団
東京ノーヴィ・レパートリーシアター』に所属。
上演演目、キャスト、劇場所在地など、
詳細は⇒『ここをクリック』

東京ノーヴイ・レパートリーシアター


2008年 出演情報
【5月】
 2日(金)13時「かもめ」
 3日(土)19時「桜の園」
10日(土)13時「どん底で」
16日(金)13時「ワーニャ伯父さん」
29日(木)13時「どん底で」
30日(金)13時「かもめ」
      19時「桜の園」
31日(土)13時「ワーニャ伯父さん」
【6月】
 1日(日)19時「どん底で」   


EdgeProject ~俳優の真実の演技の研究会~ 主催
PrayerStudio代表



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